100年前の抵当権と60年前の売買予約権仮登記がある相続登記①(宇治市在住の60代女性
相談前
宇治市在住の60代女性Oさんの両親は,20年以上前に死去していました。Oさんの両親は自宅の土地と建物を残してくれていましたが,相続人にあたるOさんら四姉妹は既に別に家を持っており,誰が引き継ぐとも話すことなく放置していました。
いつまでも放っておいてもいけないとは思っていたものの,きっかけを失って相続手続すすめようとの話は姉妹ではしないままでした。そんなときに,実家の建物がかなり傷んできたため,自治体から家の修繕をするようにとの手紙が来ました。
Oさん姉妹はこれをきっかけに相続手続をすすめるべく当事務所に相談に訪れました。
相続関係
相続人はOさんを含む四姉妹です。
相談後に判明した事実
相続物件には100年前の抵当権に60年前の所有権移転請求権仮登記がある状態でした。Oさんらは相続登記後に不動産を売却する予定でしたので,相続登記だけではなくこれらの抹消手続をしなくてはいけません。
100年前に60年前のことですから,Oさんら姉妹はどんな事情で抵当権設定登記や所有権移転請求権仮登記がされたのか,まったくわかりませんし,相手方にも心当たりはありませんでした。
みらい司法書士事務所の解決方法①(相続登記)
相続関係そのものはシンプルな親子相続の関係でしたので,特段の問題もなく完了しました。Oさん姉妹は当初法定相続分どおりでの登記を希望していましたが,その後の手続を考慮して,一旦Oさんの単独所有での相続登記とし,遺産分割協議書には売却代金を四姉妹で分配する旨の記載をしました。
みらい司法書士事務所の解決方法②(抵当権の抹消)
抵当権を抹消するには,①抵当権者に債務を弁済する,②抵当権者に抵当権を放棄してもらう,③抵当権者と抵当権設定者(今回はその相続人であるOさん)の共同で抵当権の抹消を申請,の手順が通常です。しかし,100年前の抵当権者に債務を支払うことは事実上不可能です。
①の弁済を達成する為に法務局に弁済の供託をします。弁済供託は支払いまでの利息・損害金の全部を供託します。100年分の利息・損害金と聞くと,どんな巨額なものになるかと思うかもしれませんが,インフレの力はすごいです。100年前に借りたお金は160円でしたので,100年分の利息・損害金を計算しても2000円程度です。これを法務局に供託して先述の①の条件はクリアしました。
次に,②と③の条件ですが,100年前の債権者に抵当権を放棄して貰うことも,共同で登記申請をしてもらうことも不可能です。この場合,抵当権者の行方が分からないことを法務局に疎明することで,共同申請を擬制することができます。
行方不明であることを疎明する方法はいくつかありますが,今回は登記簿上の抵当権者の住所に住民票がないことの証明を自治体に発行してもらうことにしました。とはいえ,登記事項として記載されているのは90年前のことです。そこに記載された抵当権者の住所は現在の市区町村とは全く違うものでしたので,自治体の変遷を100年前まで遡って調査します。何しろ100年前ですから,自治体の変更も1度ではありません。現在の自治体に証明書を発行して貰ったり,国会図書館で現存しない自治体の町誌や官報を調べたりして,現在の自治体とのつながりを証明しました。
供託書とこれらの疎明資料を添付して抵当権の抹消申請をし,無事に抵当権を消すことができました。
(つづく)長編になるのでここまで。つづきは後日更新します。
みらい司法書士事務所の抵当権抹消登記一覧
みらい司法書士事務所の相続登記一覧
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- 被相続人死亡から10年以上経過してからの相続登記(宇治市在住の70代男性Wさん,相続登記の事例)
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- 被相続人死亡後10年以上経過した相続登記の事例(宇治市在住の70代男性Wさん,相続登記の事例)
- 共有物分割請求の被告となった相続人の相続登記事例(滋賀県大津市在住70代男性Oさん)
- 子の居ない夫婦の遺言書に基づく相続登記の事例(宇治市在住80代女性Oさん)
- 亡くなった方が生前から相談に訪れていた相続登記の事例(宇治市在住70代女性Cさん母子)
- 所在が遠方で住居表示が実施された相続不動産の相続登記の事例(宇治市在住50代男性Wさん)
- 古い根抵当権がある不動産の相続登記の事例(京都市在住60代女性Tさん)
- 外国に住む兄弟との遺産分割協議が必要になった相続登記の事例(宇治市在住50代女性Oさん)
みらい司法書士事務所の解決事例一覧
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