古い根抵当権がある不動産の相続登記の事例(京都市在住60代女性Tさん)

相続関係説明図29.3.31

相談前

60代女性Tさん(相談者)は夫とともに父から引き継いだ店舗兼自宅で家業を営んでいました。父は20年以上前に亡くなっていましたが,相続登記をすることなく過ごしていました。

 

一方,Tさんの娘さんの夫の相続問題で当事務所がかかわり,かなり時間はかかりましたが無事に解決するということがありました。相続の準備や手続を疎かにすると困ると実感した娘さんは,Tさんに「相続のことはきちんとしておいた方がいい。」と勧め,Tさんは娘さんと共に当事務所にやって来ました。

相続関係

Tさんの母は既に他界しており,TさんとTさんの妹さんの二人が相続人となります。Tさんがずっと住み続けて家業を営んでいる不動産ですので,Tさんの名義にすることは妹さんに異論はなく,相続登記はスムーズに進むかと思われました。ところが,相続登記の準備のために登記簿謄本を確認したところ,見知らぬWさんという方を債務者とする700万円の根抵当権が設定されており,この根抵当権の抹消登記もする必要があることが分かりました。

みらい司法書士事務所の解決方法

先に相続登記をし,その後根抵当権抹消登記の準備をしました。Wさんはどうやら元の所有者のようで,Tさんの父が不動産を購入する前に設定した根抵当権のようでした。幸い,Wさんに対する融資は既に完済されておりましたので,比較的スムーズに債権者から根抵当権の解除のための書類を取得することができ,無事に根抵当権の抹消登記をすることができました。

解決後

店舗兼自宅の土地に他人の債務の根抵当権があると知ったTさんは不安そうでしたが,無事に根抵当権の抹消登記を済ませることができ,ほっとした様子でした。

司法書士からの一言

根抵当権は繰り返し融資を受けることを前提に設定されるものですので,当初の融資が完済されても債権者から当然に解除の書類が渡されるものではありません。今回はWさんが追加融資を受けていなかったので良かったですが,追加融資を受けていて債務が残っていれば簡単に解除はできなかったでしょう。また,数十年前の金融機関がそのまま残っていることは稀で,合併や商号変更,本店の移転などで沿革を調べるのが大変なことになります。元の金融機関は倒産して根抵当権者が整理回収機構のような半ば公的な機関になっていることもあります。

Tさんが娘さんに促されて相続登記をしようとしたおかげで,大問題になる前に解決することができました。Tさんの娘さんのファインプレーでしたね。

相続登記は,相続税の申告のようにお亡くなりになってから原則10カ月以内という期限がないため,登記にかかる費用を嫌って放置する方が居ます。相続登記をしない状態で何の問題も無いように見えます。ただ,それは「問題ないように見える」だけで,本当は既に問題が起きており,表面化していないだけなのかも知れないですし,将来に問題が起きるかもしれないのです。速やかに相続登記をすれば,早期に問題を見つけ比較的容易に解決することができます。今回のTさんの事例でも,もしこのまま相続登記をしないままに数十年後にTさんがお亡くなりになるようなことになれば,簡単に解決できず,Tさんの娘さんは困ったことになっていたでしょう。

相続登記はできるときにすぐにするようにしましょう。すぐに済ませれば大きな問題が起きることは少なくなります。

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