公正証書遺言の作成を行おうとしたが間に合わなかったケース
相談前
70代の女性Eさん(相談者)の弟(被相続人)は平成22年に60代でお亡くなりになりました。弟には90代の母親と共有名義の自宅不動産がありましたが,弟さんが亡くなった後に名義変更はしていませんでした。
最近,母親がめっきり衰えてきて養護老人ホームに入所したため,母親が亡くなった後の不動産の名義がどうなるのか心配になったEさんは,みらい司法書士事務所に相談にお越しになられました。
相続関係
Eさんは,Eさんと妹の二女,長男の弟(被相続人)の3人兄妹です。弟は独身で子供はいません。母親は存命ですが,父親は既に亡くなっています。
配偶者も子供もいない方が亡くなった場合は直系尊属(父母や祖父母)が相続人となります。
今回の事例では被相続人である弟の父親は既に亡くなっていましたが母親は健在でしたので,母親が単独の相続人となり姉(Eさん)と妹(二女)は弟の相続人とはなりません。
将来に母親が亡くなった場合は,Eさんと妹(二女)が母親の相続人となります。
みらい司法書士事務所の解決方法
母親は長男である弟に家を継いでもらいたい旨の希望を持っていましたが,弟は先に亡くなってしまったために,長女であるEさん(相談者)に家を継いでもらいたいと考えるようになりました。
そこで,まず亡弟の自宅不動産の共有持分名義を母親に変更(相続登記)した上で,母親が亡くなった時に備えて自宅不動産を長女であるEさんに相続させる旨の母親の公正証書遺言の作成をすることにしました。
解決後
亡くなった弟の共有持分名義を母親に変更する相続登記は当事務所が登記申請を行い,無事に完了しました。ところが,次に公正証書遺言の作成の準備に入ったところで問題が起こりました。母親が体調を崩して入院することになったのです。
遺言書を作成するには遺言者の意思能力があることが大前提です。そこで,事前に母親の状況を確認するために当職が病院に会いに行きました。歩行や外出は無理な様子でしたが,幸い意識はしっかりしていました。
自分の亡きあとは長女に相続させたい旨の意思をはっきりと表明されたので,公証人の先生に病室まで出張していただき公正証書遺言を作成する段取りを整えました。
しかし,公証人の先生に来ていただく前日に母親は意識不明となってしまったため,残念ながら公正証書遺言の作成は取り止めになりました。
司法書士からの一言
弟が亡くなった時点で相談にお越しになられていたらまだ母親は元気だったはずですので,何の問題も無く公正証書遺言の作成はできたでしょう。母親が体調を崩してからのご相談だったために,ぎりぎりのところで公正証書遺言の作成ができなくなってしまいました。
今後,母親が亡くなった場合はEさん(相談者)と妹である二女で遺産分割協議を行い,自宅不動産の帰属先を決めることになります。母親が希望したとおりに遺産分割協議がまとまることを願うばかりです。
今回のケースのように問題が目の前に現れてから慌てて動き出しても間に合わないことがあります。遺言書の作成はくれぐれもお早めにご準備下さい。
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